大学の教員は、「教授」「准教授」「講師」「助教」「助手」から構成されます。その中でも、講師は「常勤(専任)」と「非常勤(兼任)」の雇用があります。
言葉だけ見ると、「いつも出勤しているかが違うだけ?」と思うかもしれません。しかし、常勤と非常勤では、仕事内容や給料、今後のキャリアに大きな違いがあります。
文部科学省の令和元年度学校教員統計調査によると、大学の非常勤講師は約9万人いるそうです。
ネットでは、「過酷な待遇」「年収が低い」などマイナスな記事がたくさん出てきますが、その実態はどうなのでしょうか。
この記事では、大学の非常勤講師にフォーカスをあて、その仕事内容や気になる年収を紹介します。
大学の非常勤講師とは? 仕事内容は?
そもそも大学の講師とは、教授や准教授とともに大学に置かれる職の一つです。そのため常勤の場合、大学の講義に加えて自身の研究や大学の運営も行います。
教授や准教授よりも下の地位ではありますが、同じような仕事内容が求められます。
一方、非常勤講師の場合、研究や大学運営の業務はなく、講義のみを行います。
つまり、授業時間になると大学に出勤し、決められた時間の講義を行うと退勤します。
そのため、他大学の教授や准教授が副業として非常勤講師をしていたり、パートタイムの一つとしてしたりする人もいるようです。
大学の非常勤講師の年収や時給は?
非常勤講師の給料は、担当する講義数によって決まります。
1つの講義の担当で月20,000円程度が相場と言われています。
目安として、10個の講義を担当することで月に20万円を稼ぐことができます。
「そうすると年収は240万円?」と思うかもしれませんが、注意しなければいけないことがあります。9月や3月は長期休みとなる大学が多く、講義が行われるのは春夏の4月~8月と秋冬の10月~2月です。
また、非常勤講師の求人は少なく倍率も高いため、10個の講義を担当させてもらえるかも不明です。
そうすると、年収は200万円を下回る可能性があります。
気になる時給も確認してみましょう。
1つの講義を担当した場合、1コマ90分×月4回とすると、月の合計時間数は360分=4時間となるため、20,000円÷4時間=5,000円が時給となります。
時給5,000円は魅力的に見えるかもしれませんが、これはあくまで「見かけの時給」です。
実は、講義をするにあたり、
- 講義内容の選定(数時間)
- シラバスの作成(1~2時間)
- 講義資料の作成(数時間)
- 配布物の準備(毎回1時間)
- 試験、レポート課題の作成(1~2時間)
- 試験、レポートの採点(例えば100人が受講している場合、採点に1枚10分かかるとすると1,000分=約17時間)
が必要となります。
講義にこれらの準備時間(例えば3時間)を加えると、1コマ(90分+3時間)×月4回=14時間となるため、時給は20,000円÷14時間=約1,500円となります。
大学の非常勤講師は大変? キャリアは?
大学の非常勤講師の仕事内容や給料を紹介しましたが、どのように感じましたか。
教授や准教授が副業として非常勤講師を兼任することはアリでしょう。
また、ポスドクや助教が指導歴をつけるために行うこともキャリアアップに向けた準備にもなります。
しかし、教授の平均年収が約1,000万円、准教授の平均年収が約800万円と比較すると、年収200万円は少なく、常勤に比べて福利厚生などの待遇もよくない非常勤講師の生活は大変ですよね。
キャリアについても常勤の講師と大きく異なります。
常勤講師は、研究成果に応じて准教授や教授へと昇進していくことができます。
一方、非常勤講師は研究できる環境が整っておらず、新たな研究成果が得られないため、昇進が難しい立場です。
なるべく早く非常勤から常勤の講師へとなることで、生活は楽になるはずです。
成果がない中では常勤になることは難しいですが、教授や准教授とつながりができると、研究員や助手として雇用してもらえる可能性があります。
そこから成果を出し、常勤講師と同じキャリアを目指すことがアカデミックで生き残る近道です。
教授や准教授と積極的にコンタクトを取り、研究者としての力量を知ってもらうことが非常勤講師を抜け出す方法の一つかもしれません。
まとめ
この記事では、大学の非常勤講師の仕事内容や年収を紹介しました。
- 大学の非常勤講師は、大学の授業のみを行う
- 年収は約200万円、実質の時給は約1,500円程度
- 教授や准教授、キャリアアップを目指す助手や助教の副業としてはいい
- 非常勤講師だけでは生活が大変
- 教員のつながりから常勤への雇用を
国内の教授や准教授のポストは年々減っており、生活に苦しむ研究者がたくさんいます。
修士号や博士号を取得した優秀な人材が非常勤講師として埋もれてしまうと、日本の研究力が下がる一方です。
国が研究者の生活を保障する制度を考え直すために、研究者の現状をアピールすることが重要かもしれません。
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