文系の学部生・院生や、既に就職して働いている文系の人は、これから研究職になれるチャンスはあるのでしょうか?
- 「やっぱり研究職に憧れがある」
- 「研究で自分の力を試したい」
- 「とことん追求したいテーマがある」
そう思って、研究職に進もうと思う方もいるはず。
ただし残念なことに、文系の研究職は大学でも企業でも、もともとのポストの数がとても少ないです。
この記事では、数少ない文系の研究職にはどんな仕事があり、そしてそれらに就くにはどんな方法があるのか、解説します。
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文系から大学研究職への就職・転職
まずは大学研究職への就職から考えていきます。
大学院に進学し、大学所属の研究職に
人文・社会科学系には、哲学のように考えて深めていく学問や、新たな発見があるたびに盛り上がる歴史学・考古学、実験も行う心理学などの分野があります。
こうした分野で研究し続けたい人も中にはいます。
その場合、大学での研究職を目指すことになるでしょう。
もっともオーソドックスな方法は、大学院の修士課程・博士課程に進学し、修士号・博士号を取得することです。
大学の研究職も狭き門です。
最初は非常勤講師の仕事を紹介してもらったり、任期つきでもポスドクの職で経験と研究業績を積んだりしながら、専任のポストを狙って地道に就職活動をしていくしかありません。
「文系の大学研究職はやめとけ」という声も聞きますが、大好きな研究をとことん究めたいと思うものです。
ちなみに、専任教員になれれば平均的に、助教で年収600万円程度、准教授で700万円以上、教授で800万円以上稼ぐことができます。
最近では社会人から修士課程に入り直してさらに博士課程へ進学し、研究職を目指す人も珍しくなくなってきています。
必ずしも、学部からストレートで進学しなければ研究職になれない、という時代ではなくなりつつあるということですね。
また、分野によっては修士号までで専任になれる場合もありますので、自分の分野での募集条件をチェックしておくとよいですね。
現場経験を生かした大学研究職への転職
特殊なケースですが、現場経験を生かして大学研究職に転職する人もいます。
1つが経営学やその周辺の分野です。
例えば、学部を卒業した後、経営コンサルタントとして長年勤務した人が経営学系の学部に転職して教員になることがあります。
ヘッドハンティングの可能性もあるでしょう。
ただし、MBA(経営学修士)を取得した上で、仕事で大きな成果を上げていなければなりません。
社会福祉分野でもこの傾向があります。
介護や相談業務など、現場経験がある人が社会福祉系の学部で教員になることがあります。
こちらも修士号は必要で、さらに専門資格(介護福祉士、社会福祉士など)を取っていなければなりません。
なお、大学教員として働きながらこれまでの仕事の一部を続けることもできます。大学の規定で副業の時間数などが定められていますので、それに抵触しない範囲であれば可能です。
文系から企業研究職への就職・転職
企業で文系研究職のポストがあるところはかなり少なく、大学以上に狭き門です。
学術研究を行う研究職
数はかなり少ないですが、求人自体はあります。
例えば、特定の自治体で、労働などに関するデータ分析を行う仕事があります。
分野としては経済学や社会学の範囲にあたります。
また、福祉系の財団が持っている研究所などで、研究員として文献収集やデータ分析、公開講座の運営を行うという仕事もあります。
分野としては社会福祉学の範囲にあたります。
あるいは別の研究所では、史料調査を行う学芸員の募集がありました。
分野は歴史学ですね。
学術研究以外を行う研究職
こちらもごく少数ですが、いくつか例を挙げます。
まず、シンクタンクでの研究職です。
内容としては経営コンサルティングとそれにともなう調査・研究がメインです。
それから、研究職として文系も募集対象になっているITインフラ系コンサルティングの仕事もあります。
しかし、これは新卒の求人であることが多いです。
また、文系から理系の研究開発職に進むという道もあります。
メーカーやIT企業でのエンジニアです。
基本的には理系からの採用となりますが、文系でもスキルや関心、アピールの仕方次第で採用される可能性があります。
最後に、研究職の補佐的な職ですが、機械やサンプルを扱って理系の実験を手伝うアシスタントの仕事もあります。
自分で研究をするわけではありませんが、研究に携わり、貢献できます。
この職は他に比べれば比較的求人数が多く見られます。
文系から研究職へ就職・転職を成功させる方法とは?
では、こうした職に就くにはどんな方法があるのでしょうか?
大学への就職・転職の場合
学部生の場合は、まずは修士課程への進学です。
修士課程以上の人は、研究に取り組んで学会発表をしたり、交流の場に参加して人脈を広げてみましょう。
人脈が直接的に専任教員への道につながる時代ではなくなっていますが、非常勤講師の職はコネクションで回ってくることも多くあります。
また、自分と同じ分野で研究活動をしている先輩がどのようなキャリアパスをたどっているのか、調べてみるのもよいでしょう。
ロールモデルとなる人が見つかれば、目標や計画が立てやすくなります。
非常勤講師の職を自分で探したい場合や、ポスドクや専任の求人状況を知りたいときには、jrec-in(研究人材募集サイト)に登録して情報を取りましょう。
企業への就職・転職の場合
まず、希望する職を採用している企業はゼロではないという程度で、かなり苦労することも予想されます。
そんな状況で、どんな方法が考えられるのでしょうか。
自分の就きたい職、希望する企業が決まっている場合、その企業についてリサーチを常にしておきましょう。
新卒であれば就職活動の中で利用できる資源は多くあります。
合同説明会などで似たような企業をいくつか回って話を聞くこともできます。
また、インターンをして顔や仕事ぶりを覚えてもらうことで、採用に繋がることもあります。
転職の場合は信頼できるキャリアカウンセラーを見つけるのが近道です。
関心と転職希望先のマッチングについて相談したり、これまでの職歴からアピールできることや実は気づいていないアピールポイントを見つけてくれることがあります。
新卒、転職いずれにしても、
- その企業に入ってどういったことを実現したいのか
- それが自分にとってどんなメリットがあり、企業側にどんなメリットがあるのか
将来的なビジョンを明確に持っておくことが重要になります。
文系から研究職への就職・転職まとめ
- 大学、企業とも、研究職のポストは少ない
- 大学の研究職には、大学院への進学が基本。社会人から大学院に入り直して研究職に就く人もいる
- 企業の研究職は、かなり少ないが学術研究ができる職もあり、自治体や研究所などがその例
- 企業では学術研究以外の研究職もあり、コンサルタントやエンジニアがその例
- 大学の研究職に就くには、人脈を広げること、ロールモデルを見つけること、専用サイトを利用することが重要
- 企業の研究職に就くには、企業研究をすること、インターンを活用すること、将来的なビジョンを明確にすることが重要
文系から研究職のポストを目指すのは高い壁がありますね。
迷ったときには、自分が研究を続けている姿を思い描いてみてください
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