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文系研究者の非常勤講師だけで稼げるの? 生計立てて家族を養うのは超大変

人文研究者の仕事

文系研究者を目指す人は、博士課程修了後や在籍中に、まず大学の非常勤講師の職に就くことが多いですよね。文系研究者の大学専任教員になるためには非常勤講師になることが第一歩ですから、1コマ持てただけでもちょっと安堵します。

でも、給料の条件を知らされて、

「普通のアルバイトよりはもちろん割がいいけれど、この額で今後生活していけるのだろうか…」

「そしていつか家族ができた時、養っていけるのか…?」

といった不安もあるのではないでしょうか?

この記事では、文系研究者として大学非常勤講師の職に就いた場合、どれくらい給料がもらえるのか、さらにその給料で生計を立てられるか、家族を養えるか、といったことを、データを見ながらシュミレーションしていきます。

文系研究者の非常勤講師の給料はどれくらい?

まずは、文系研究者の非常勤講師の給料をお教えしちゃいます!

非常勤講師の場合は、授業1コマ1回に対して決められた金額が支払われます。詳しく解説していきますね。

非常勤講師の給料の実態!

私自身や周りの人から聞いた話では、国公立ではあまり差はなく、授業1コマ1回に対して9,000円程度が相場です。一方私立には差があり、安ければ国公立よりも安い7,500円程度、高ければ12,000円くらいになります。

これが半期の15回分になると、安くて112,500円、高ければ180,000円になります。
ということは、通年で1コマ教えると、年収は225,000~360,000円という計算です。これだけではとても食べていける年収ではありませんね。
もちろん、賞与などはありません。

そこで、多くの人は複数の大学で掛け持ちをして生計を立てているわけです。

では、非常勤講師の平均年収はどれくらいなのでしょうか?

日本には各地域に「大学非常勤講師組合」という組織があり、給与や待遇に関する実態調査を行ったり、不利益が生じた場合に行動を起こしたり、陳情書を国会議員に提出したり、といった活動をしています。

その組織が実態調査を行ったものがあり、非常勤講師の給料の実態が明かされています。

それによりますと、平均年収は306万円だそうで、44%の人が250万円未満とのことでした。かなり厳しい数字ですね・・・。

また、非常勤講師というのは年度ごとあるいは半期ごとの契約になるため、場合によって急な雇い止めや減ゴマもあり、突然給料がガクッと下がってしまうこともあります。
とても不安定な状況にあるわけです。

授業以外にもやることたくさん!

先ほど紹介した給料は授業1コマ1回あたりでしたが、授業の90分以外にもやることがあり、それらを含めた給料になっています。
純粋に90分に対して10,000円の給料だったら全然悪くないんですけどね。

では、非常勤講師が授業以外にしていることとは一体何でしょうか?
以下に挙げてみます!

  • その年度のシラバス作成、事務書類の作成
  • 授業準備
  • 授業のたびに提出課題のチェック
  • 試験やレポートの採点

これが授業以外の基本的な仕事内容です。

中でも課題のチェックや試験・レポートの採点が大変で、時間を要します。受講人数が多ければその分時間を取られることになり、100人以上の授業の場合だと大変です。しかし、大講義に対して手当の出る大学はとても少ないです。

また、これらの他、欠席した学生から質問が入ることもあり、細かい対応を求められたりもします。さらに、授業の進め方などについて専任教員から要望がある場合はメールのやりとりなども必要になります。

こうした仕事に対しては手当などがあるわけではないので、時間をかければかけるほど時給換算すると下がっていきます。おそらく、最低限の時間で済ませたとしでも時給は2,000~3,000円程度なのではないでしょうか。

では、非常勤講師だけで生計が立てられるのかどうかをシミュレーションしてみましょう!

生計を立てるためにはどれくらい働くの?

非常勤講師だけで生計を立てている人も多くいます。実際、生計を立てるためには非常勤講師の仕事だけだとどれくらい働く必要があるのか、一人暮らしの場合と家族を養う場合とで考えてみましょう。

一人暮らしの場合

総務省のデータによると、一人暮らしの場合に家賃以外にかかる費用は、なんと月額12万程度だそうです。食費・水道光熱費・通信費・交通費・交際費・美容費などが含まれます。

これに家賃がかかると、最低ギリギリのラインで考えても15万、さらに健康保険料などがかかってくると月額17万は必要ですね・・・。
つまり、年収にすると200万円程度となります。

上で、通年で1コマ教えると、年収は225,000~360,000円という計算をしましたので、必要なコマ数は週6~9コマということになります。

先に挙げた「大学非常勤講師組合」による実態調査では、平均担当コマ数は週9.2コマという結果が出ていました。

週9.2コマ教えると言ってもすべて同じ大学というラッキーはなかなかなく、複数の大学を掛け持ちします。首都圏など大学の多い地域であれば現実的に可能かもしれません。ちなみに、同じ調査結果では平均勤務校数は3.1校でした。

複数の大学に通う場合、すべての大学が短い通勤時間に収まることはまずなく、片道2時間以上かけて通ったりもします。1日に2校回る場合、午前に1コマ、午後に1コマ入れただけで9~17時が潰れます。

また、授業準備や課題チェックにかかる時間もコマ数が増えるとその分増えるので、時間的な余裕はあまりないでしょう。

自分自身の研究に割ける時間も週末などに捻出する形になると思います。

家族を養う場合

次に、家族を養う場合です。

仮に男性の非常勤講師で、妻と子どもが1人いると想定してみます。総務省のデータによると、3人家族の家賃を除く生活費は月額28.4万円にもなるそうです。生命保険料や子どもの習い事も含まれています。

ここに家賃を乗せると月額最低でも35万円にはなりますね。
これを年収にすると420万円となります。

先ほどと同じように計算をすると、なんと必要なコマ数は週12~19コマです。

1つの大学でも12コマはかなりきつく、普段は授業準備ができないでしょう。

まあ、そもそも1つの大学で1人の人間が10コマ以上持たせてもらえることなどないと思います。複数の大学を掛け持ちしていても、合計12コマや19コマの授業が持てるほど仕事の紹介が来ることは少ないでしょう。

仮にこれほど多くのコマ数をこなすとなると、授業準備はすべて休暇中に終わらせてしまうか、通勤時間が短く、講義のみの授業で何年も同じ資料を使いまわして同じ話しかしない、という方法であればどうにか可能なレベルです。

19コマとなるともう不可能と言ってよいと思います。自分の研究に割ける時間も捻出できなくなります。

非常勤講師が家族を養うために必要なことは?

では、非常勤講師だけで家族を養うには現実的にはどうすればよいのでしょうか?

いくつか方法を考えてみます。
なお、ここに挙げる方法はどれか1つということではなく、併用していけるものもあります。

家賃と生活費を抑える

いきなり節約の話になってしまいますが、やむを得ないでしょう。

まずは家賃を抑えるためにどちらかの親と同居をしたり、URに住むのが良いでしょう。単純に安い賃貸に住もうとすると駅から遠くなってしまいますので、通勤時間に響いてしまいます。

生活費も抑えられるよう、奥さんにお願いしましょう。安いスーパーを利用してまとめ買いしてもらったり、ネットでわけあり食品を買ってもらったりすると少しは食費が抑えられます。

休暇中は集中講義や別の仕事をする

授業時間中にこなせるコマ数は、上で述べたように限られています。12コマが限界かなと思うのですが、夏季休暇・春季休暇は意外と長く、この間は授業がありません。
その間に授業準備もせざるを得ないとは思いますが、集中講義で夏に1コマ、冬に1コマこなせれば、2コマ分プラスになります。

さすがにそれ以上増やすのは厳しいと思いますので、塾講師や院試の個別指導など、割の良い仕事をして稼いでおくのが妥当なところかと思います。こういった仕事は夕方から夜が多いので、昼間は自分の研究に充てることができます。

不労所得を得る

不労所得を得るというのも手です。株や投資信託など、自分の可能な範囲でリスクの小さいものを始めてはいかがでしょうか。最低でも定額預金は活用した方が良いと思います。

奥さんにも少し働いてもらう

「養う」ではなくなってしまいますが、お子さんが小学生以上だったり、就学前でもどちらかの親に預けられる場合は、奥さんにパートに出てもらうなどお願いするしかありません。
あるいは在宅で可能な仕事をしてもらうというのも手ですよね。
少なくともスマホでポイ活をしてもらうようお願いしてみましょう。

非常勤講師を脱するために、とにかく専任教員に応募する

きっと多くの人がしていると思いますが、助教、講師、准教授の公募に応募しましょう。
応募書類を書くにも大学ごとに様式が異なるので時間がかかってしまいますよね。
もし奥さんが理解してくれるのであれば、ワードやExcelの様式に記入するのを手伝ってもらったり、郵便局に行ってもらうなど、お願いして時間を節約するのがおすすめです。

文系研究者の給料と生計の立て方まとめ

  • 非常勤講師の平均年収は300万円ほど。
  • 授業1コマあたりの給料は7,500~12,000円ほどだが、授業準備や採点にも時間を使うので、割が良いとは言えない。
  • 一人暮らしならば週9コマほど教えて、厳しいがどうにか生計が立てられる。
  • 非常勤講師の仕事だけで家族を養うには12コマ以上教える必要があり、現実的に不可能。
  • 非常勤講師で家族と生活していくためには、節約はもちろん、別の仕事もしたりと工夫が必要になる。

非常勤講師というのはかなり厳しい状況に置かれていますね。家族に最大限協力してもらうことで、どうにかすれば生計を立てることはできるかもしれません。

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