文系大学院に進学したいと思った時に、「はたして進学という選択が自分にとってメリットになるのかデメリットになるのか」と悩むこともありますよね。
- 学部時代のテーマが面白かったからもっと突き詰めて学んでみたい
- 4年では学び足りない
- 研究したいテーマがある
など、動機はさまざま。
同時に、「就職できるのかどうか、その先にどんな将来が待っているのか」と少し不安を感じることもあるでしょう。
この記事では、文系大学院への進学のメリットとデメリットについて、私自身の体験も交えながら解説していきますね。
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文系大学院へ進学する人ってどんな人?
大学院への進学について、修士課程への進学と博士課程への進学とはかなり質が異なります。それぞれ、どんな人が進学しているのでしょうか。
学部から修士課程へ
まず、学部から修士課程へ進学する人は、もちろん少ないですがかなりレアとまではいきません。
文部科学省がまとめた「学士課程修了者の進学率の推移(分野別)」では、修士課程への進学率は全体で10%程度となっています。文系に絞ると、人文学では5%弱、社会科学では3%弱、そして教育学では5%強という数字が出ています。
それぞれ20~30人に1人、という計算になりますね。
とは言え、大学によって傾向はかなり異なりますので、例えば同じ学年に200人いても1人も進学しない大学もあれば、50人近くが進学する大学もあります。
学部から修士課程には、どのような動機で進学するの?
では、学部から修士課程へ進む人は、どんな動機で進学を決意するのでしょうか?
例を挙げてみました。
- 卒論で研究したテーマをもっと深めてみたい。
- 卒論のテーマとは別だが、研究したいと思うテーマがある。
- 研究することが楽しく感じたので、続けてみたい。
- 将来、研究者になることを目指している。
- まだ就職したくないので、モラトリアムを満喫したい。
この他、社会人入学の場合、自分の仕事上の課題を解決したいとか、資格を取りたい、箔をつけたいという動機もあるとうかがえます。
修士課程から博士課程へ
次に、修士課程から博士課程への進学です。
博士課程へ進学する人、と言うとめちゃくちゃレアなイメージですが、修士課程から博士課程への進学という場面に限ると、それほど割合は低くありません。
先ほど見た「学士課程修了者の進学率の推移(分野別)」では、博士課程への進学率は全体で1割弱となっています。人文学では15%強と意外にも多く、社会科学では9%程度です(さきほど挙げた教育学は数字が掲載されていませんでした)。
博士課程へはどのような動機で進学するの?
「研究者になりたい」
文系の場合、これに尽きます。
ごくごくまれに、実家がとてもお金持ちで、趣味で研究をさせてもらえるけれども卒業後は家業を継ぐ、というような人もいます。
それでは次に、進学のメリットとデメリットを見ていきましょう。
文系大学院へ進学するメリット
進学のメリットとデメリットについても、修士課程への進学と博士課程への進学とでは異なってきますので、分けて考えていきましょう。
修士課程へ進学するメリット
修士課程へ進学するメリットは以下のようなものが考えられます。
- 2年間だが、研究の基礎を知ることができ、ほどよく楽しめる。
- 学部生時代に取得できなかった資格を取得し、仕事に活かす。
- 大学院の内側のいろいろなことが少し見えてくる。
- 就職上も大きなマイナスにはならない。
- 就職について考えるのを遅らせることができる。
①2年間だが、研究の基礎を知ることができ、ほどよく楽しめる。
学部時代に研究に関心を持ち、何かしら問いを明らかにしたいと思った人は、少しではありますがその欲求を満たすことができます。
また、修士課程までならば、ほどよく研究を楽しむことでしょう。
②学部生時代に取得できなかった資格を取得し、仕事に活かす。
学部生のときにも資格を取得することができますよね。代表的なものが教員免許。
でも、他の授業などとの兼ね合いで取れなかったり、別に取らなければならない資格があったりすると4年間で取ることができない場合もあります。
そんな時に進学することで資格取得できる、というメリットがあります。
③大学院の内側のいろいろなことが少し見えてくる。
大学院に上がって教員や院生の先輩と接する時間が増えると、良くも悪くも大学院という組織の内側のことが見えてきます。すると、博士課程の先輩や教員の研究の進め方が見えて尊敬できたり、逆にイヤなところが目についたりもしますよね。
また、「大学院」や「研究室」というのがどんなところかをよく知ることにもなります。こうしたことが、博士課程に進学するかどうかを決める判断材料になることもあるんですよ。
④就職上も大きなマイナスにはならない。
修士課程までの進学ならば、新卒としての就職上も大きなマイナスにはなりません。現在は多くの職で「学部卒、院卒」で募集しているので、選択肢が狭まって困る、ということはそれほど多くはないでしょう。
⑤就職について考えるのを遅らせることができる。
メリットと断言してしまってよいかわかりませんが、「モラトリアムを満喫できる」ということでしょうか。もしまだ大学で学びたい、そして就職についてもう少し考えたい、という場合にはベターな選択になるかもしれません。
理系の場合には、「学部生時代は教授の手足となって実験をするしかなかったから、修士で自分の研究をしてみたい」という話も聞くことがありますが、文系の場合は原則そういった縛りがないので、あてはまりませんね。
これに対して、博士課程に進学するメリットとはどのようなものなのでしょうか。
博士課程へ進学するメリット
博士課程へ進学するメリットは、多くはありません。
研究者を目指している場合、博士課程に進学し学位を取得するというのが最近では(分野にもよりますが)最低条件となっています。
博士課程へ進学することについては、この後詳しく見ていきますが、どちらかと言うとデメリットの方が大きいです。
では、デメリットの話に移りましょう。
文系大学院へ進学するデメリット
こちらも修士課程への進学と博士課程への進学とで分けて考えていきましょう。
修士課程へ進学するデメリット
修士課程の進学について、メリットはいくつかありましたが、やはり当然ながらデメリットもあります。
- 院に入ってもすぐに就活をしなければならない
- 一部の仕事に就きにくくなる可能性がある
① 院に入ってもすぐに就活をしなければならない
学部生が3回生で就活をするように、院生は修士課程1回生で就活をします。そうすると、ゆっくりしている時間はないですよね。就職について考えるのを遅らせたくて、あるいはモラトリアムを満喫したくて修士課程に進学した人にとっては、せわしなく感じるかもしれません。
②一部の仕事に就きにくくなる可能性がある
多くの仕事では文系院卒だからと言って門前払いをされることはあまりありません。
しかし、理系院卒のように研究職や技術職として重宝されるというような前提がないです。
そのため、文系の修士課程に進学した上で就職をする場合、なぜ院卒なのか、その上でなぜその仕事を希望するのか、ということが明確に伝えられなければなりません。
そうした説明が十分にできれば問題ないと思いますが、そうでない場合は院卒という肩書が邪魔になる可能性も。
あるいは、専門学校卒を多く募集しているような職では、受け入れられにくい場合もあるかもしれません。
では、最後に博士課程へ進学するデメリットです。
博士課程へ進学するデメリット
博士課程へ進学するデメリットはいくつかあります。
- 本当に研究者になれるとは限らない
- 一般企業の就職はまずできなくなる
- 同世代に比べるとお金がない
- 女性の場合、結婚に支障が出ることがある
①本当に研究者になれるとは限らない
博士課程へ進学すると、多くの人が「研究者になること」=「大学の専任教員になること」を目標にするかと思います。
しかし、博士課程へ進学したからといって、必ず研究者になれるとは限りません。むしろ、文系の場合は他分野に比べ、残念ながら研究者になれないケースがやや多くなっています。
②一般企業の就職はまずできなくなる
一般企業への就職を考えた場合、修士卒ならば学部卒と同じ枠で「新卒」として扱ってもらえますが、博士卒の場合はそれが適応されないことが多いです。
③同世代に比べるとお金がない
博士課程でずっと研究をしていると、学費を払うばかりで稼ぐことがないので、自分よりも先に仕事をしている同世代の友人に比べると圧倒的にお金がありません。
とは言え、研究を続けたいという強い意志で博士課程に進学した人は、久しぶりに会った友人の羽振りの良さに驚いたとしてもあまり気にならないかもしれません。
むしろ気になるのは「家庭が持てるか」「老後は大丈夫か」という不安かもしれません・・・。
④女性の場合、結婚に支障が出ることがある
女性で博士課程に進学する人も最近は多いですが、場合によっては結婚相手がなかなか見つからないこともあります。高学歴で頭の良い女性というのは、男性からは「かわいくない」と思われがちだったりしますよね。
また、地域や家庭によっては彼氏の親などから「女のくせに博士なんて」と言われることもまれにあり、結婚に支障が出る場合があります。
文系大学院への進学まとめ
- 修士課程に進学する人は、研究を続けてみたい、モラトリアムを満喫したい、などが動機
- 博士課程に進学する人は、研究者になる、というのが唯一の動機
- 修士課程に進学するメリットは、ほどよく研究を楽しめて、就職に大きなマイナスがない
- 博士課程に進学するメリットは、とにかく研究者を目指せる
- 修士課程に進学するデメリットは、院に入ってすぐに就活を迫られ、一部の職には就きにくい可能性がある
- 博士課程に進学するデメリットは、研究者になれると保障されているわけではなく、しかし同時に一般企業への就職はほぼできない上、将来が心配になる
文系大学院への進学についてメリット、デメリットをいろいろな観点から挙げてみました。
修士課程までならばメリットとデメリットのバランスは良いですが、博士課程に進学するとなると多くのデメリットが出てきてしまいますね。
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